経理とは、事業活動において「利益」を生むために、売上や仕入れ、その他の出費など日々の取引を記録して収入・支出や利益・損失といったお金の動きを管理することです。これらを正確に記録・管理・把握することによって、安定した経営が実現されます。
この経理によって記録された数字をもとに一定期間(ほとんどの場合、1年間)の損益を計算して、その間の利益・損失を確定させるのが決算です。いわば、決算書はその期間中の事業成果を示す成績表のようなものです。
また、法人・個人事業問わず、事業者は利益に応じて納税する義務があります。経理・決算によってまとめた記録をもとに年間の納税額を算出して税務署に報告するのが確定申告です。きちんと税金を納めなければ追徴課税されるなど、社会的な信用を失い、以後の取引や融資などが非常に難しくなります。
経理・決算・確定申告いずれも大切な業務です。ここでは個人事業主における進め方について簡単にご説明します。正しい知識を身につけ、プロの経営者としての第一歩を踏み出しましょう。
経理業務でやることは多岐に渡りますが、時期により3つに大別することができます。
時期 | 主な内容 |
---|---|
①日次業務(毎日) | ▽出納業務(現預金の入出金および記録) ▽経費精算(月次で行う場合もある) ▽伝票や書類の整理 |
②月次業務(毎月) | ▽売上(売掛金)の請求・回収、仕入(買掛金)の支払 ▽従業員給与の計算・支給 等 ▽月次試算表の作成(必須ではないが、融資審査時に徴求されることもある) |
③年次業務(毎年) | ▽決算整理および決算書の作成 ▽確定申告と納税 |
ここで重要なのは、日々きちんと帳簿をつけていくことです。特に創業期は本業に忙殺されるあまり、経理を疎かにしてしまいがちですが、先延ばしすると後々大変苦労します。
毎日きちんと帳簿をつけることによって月1回の月次業務が楽になり、月次業務をきちんと行うことによって年に1回の年次業務、つまり決算整理と確定申告が楽になります。
個人事業主・法人ともに帳簿書類の保存義務があります。
原則として7年間ですが、法人で欠損金を生じた事業年度は10年間です。
経理業務を行うにあたり、どのように帳簿をつけるか、というルールを定めたものが「簿記」です。そして、その簿記には2つのルールがあり、どちらをとるかによって適用できる確定申告の種類も異なってきます。
簿記の2つのルールとは、単式簿記と複式簿記です。まずは2つの違いを押さえましょう。
単式簿記 | 複式簿記 | |
---|---|---|
帳簿のつけ方 | 収益と費用のみを記録 (家計簿・お小遣い帳のイメージ) | 収益と費用に加えて、資産や負債の増減も記録 |
作成する決算書 | 損益計算書のみ | 損益計算書・貸借対照表 |
青色申告特別控除 | 最大10万円 | 最大65万円 |
単式簿記は日々いくら入金したか、何に出金したかを記録してまとめるだけですので比較的簡単です。
それに対して複式簿記は「売掛金の回収による入金」を「現預金・増、売掛金・減」、また「経費の支出」を「費用・増、現預金・減」など、必ず二面性を持って記録しなければなりません。
このように、複式簿記の方は少々複雑ですが、次項で説明する青色申告によって非常に大きな節税メリットがありますのでこちらがお勧めです。
簿記のルールに基づき、1年間の売上や経費などを税務署に報告することを確定申告と言います。確定申告には「白色」と「青色」の2種類があります。
青色申告をするためには税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を届出る必要があります。未提出の場合、自動的に白色申告となります。
節税効果が大きい順に、「青色申告(65万円)」→「青色申告(10万円)」→「白色申告」となります。青色申告は複式簿記が必要になりますが、白色申告の記帳・帳簿保存の義務化と会計ソフトの低廉化・高性能化によって双方の事務負担の差が小さくなっていますので、節税を重視するなら青色申告がお勧めです。
白色申告 | 青色申告 | ||
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届出 | 不要 | 必要 | |
特別控除 | なし | 10万円 | 最大65万円 |
帳簿付け | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 |
決算書の作成 | 収支内訳書 | 損益計算書・貸借対照表 | |
一部未記入でも可 | 全て記入 | ||
専従者控除 | 配偶者 :最大86万円 配偶者以外:最大50万円 | 金額が妥当であれば控除額に制限なし | |
損失の繰越し | なし | 3年 |
日々の帳簿付けは大変です。特に経理経験のない方にはとても負担のかかる作業だと思います。
そこで、毎日の経理業務を円滑にして事務負担を減らすために、福岡商工会議所では3つの提案を行っています。