個人事業主と法人の違いや、どちらにすべきか、というのは創業に関するご相談の中でも比較的よくお受けするご相談です。
ここでは、両者の特徴や違いをご紹介します。また、法人は最も一般的な形態である株式会社のほかに、合同会社・合資会社・合名会社に分けられます。それぞれメリット・デメリットがありますので、創業される業種や将来的な事業規模などを勘案して決定しましょう。
個人事業主と法人の最も大きな違いは、利益・損失・契約主体(法的な権利・義務を持つ者)が誰に帰するか、という点です。
個人事業主は「○×商店」といった屋号を用いていても、事業は個人として営んでいると見なされ、利益は全て自分のものになります。ただし、損失も自分で負わねばならず、借入金を利益で返済できなくなった場合、私的な財産を処分してでも返済しなければなりません。
一方で、法人(株式会社・合同会社)は利益・損失・契約主体は全て組織体に属し、経営者は役員報酬という形で収入を得るため、事業で得た利益を全て自分のものにはできません。しかし、事業の借入金は法人に返済義務があるため、代表者などが個人の財産を処分してまで返済しなければならないということはありません(代表者が連帯保証人になっている場合はこの限りではありません)。
一般的には、当初は個人事業主として創業し、事業が軌道に乗り始めて所得が増えてきたら法人化(法人成り)する方が多いですが、取引相手がもっぱら企業(特に大手企業)のみという方は最初から法人を設立した方が良い場合もあります。また、複数の仲間と事業を始める場合も法人が多いようです。
以下、個人事業主と法人(株式会社・合同会社)の違いを列挙します(メリットは 、デメリットは で示しています)。
個人事業主 | 法人(株式会社・合同会社) | |
---|---|---|
開業手続き (詳細はこちら) | 税務署への開業届出のみ(費用は不要) | 会社法に従い複雑な手続きが必要(費用もかかる) |
社会的信用 | 一般的に低い | 一般的に高い |
代表者の事業に対する責任の範囲 | 代表個人の無限責任 ※損失の負担は全て個人で負う必要があり、借入金の返済や未払いの買掛金などは個人財産を処分してでも弁済しなければならない | 代表者・出資者の有限責任 ※代表者・出資者は出資額を上限とした責任にとどまる(ただし、金融機関からの借入は代表者の連帯保証を求められることも多い) |
会計処理 | 比較的簡単 | 比較的複雑 |
税金 | 所得に応じて5~45%の所得税がかかる | 資本金1億円以下の法人の場合 法人の所得800万円以下の部分に15%、 800万円超の部分に23.2%の法人税がかかる |
青色申告 | 欠損金の繰越控除は3年間 最大65万円まで特別控除あり | 欠損金の繰越控除は10年間 特別控除なし |
社会保険 | 事業主は、国民健康保険と国民年金に加入 | 代表者・役員は健康保険と厚生年金に加入 |
事業主の報酬 | 事業からの利益が全額報酬となる(経費算入不可) | 役員報酬として受ける(経費算入可) |
一般的には所得が1000万円前後が法人化の目途と言われていますが、法人化した場合は社会保険料の負担が重くなる場合があるため、法人化した方が有利となる明確な基準はありません。
そのため、個人事業主としての所得が増えて法人化を検討する際には税理士等の専門家にご相談することをお勧めいたします。福岡商工会議所では、税理士も含めた専門家の無料相談窓口を設置しておりますので、是非ともご利用下さい。
会社法では株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つが定められています。
2006年(平成18年)の改正会社法の施行に伴う合同会社の導入と最低資本金の撤廃によって資本金が1円からでも設立できるようになったことで、現在においては合資会社・合名会社が新設されるケースはほとんどなくなっています。
また、その改正会社法施行時に有限会社も新設できなくなっています(それまであった有限会社は引き続き存続可能)。
そのため、株式会社か合同会社が現実的な選択肢となりますので、以下に比較を掲載します。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
出資者の数と名称 | 1名以上・株主 | 1名以上・社員 |
最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会(全社員の同意) |
代表者 | 代表取締役or取締役 | 代表社員 |
定款の認証 | 必要 | 不要 |
登録免許税 | 資本金の1000分の7 または15万円のいずれか高い方 | 資本金の1000分の7 または6万円のいずれか高い方 |
利益分配・議決権分配 | 出資額に応じて配分 | 任意に配分可能 |
組織変更 | 相互に可 | |
出資者の責任範囲 | 有限責任 |
合同会社はメリットとして、
などがありますが、一方でデメリットとして、
といったことが挙げられます。
<合同会社が向いている場合>
○費用を抑えて法人格を得たい場合
法人税等の概要は株式会社と同じですので、個人事業主と比較しての節税面という観点からはメリットとなり得ます。
○家族経営や親しい仲間内などで規模を大きくせず事業運営していきたい
将来的な株式上場を前提としないならば、合同会社も1つの選択肢となり得ます。
○資金面以外の貢献者に利益・議決権を分配したい場合
合同会社は出資金によって利益・議決権が左右されません。したがって、仲間内で会社を設立する際に、「特別な技術や特許を持っている人」、「幅広い人脈を持っている人」など、資金面以外で貢献した人も対等に経営に関与したり利益分配を享受したりすることができます。
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