地域別最低賃金改定の目安に対するコメント

令和4年8月2日

地域別最低賃金改定の目安に対するコメント

福岡商工会議所
会頭 谷川 浩道

地域別最低賃金額改定の目安が示され、全国加重平均では31円、3.3%の大幅な引上げとなった。

収益を上げ、賃上げが可能な環境にある企業は積極的に行うべきであるというのが商工会議所のスタンスである。一方、最低賃金は経営状況の良し悪しに関わらず全ての労働者にあまねく適用され、仮に下回る場合には罰則の対象になることから、通常の賃上げとは異なる性格を有している。

今般示された目安額は、消費者の生計費に対する足元の物価上昇の影響を強く考慮する一方、企業の支払い能力の厳しい現状については十分反映されたとは言い難いのではないか。
福岡県においては、第3次産業のウエイトが高く、目下、コロナ感染再拡大の影響を受け困難に直面している飲食・宿泊業は、特に最低賃金の改定により経営が圧迫されやすく、事業の継続に不安感・危機感を抱いている。また、原材料・エネルギー価格など企業物価の高騰を十分に価格転嫁できていない多くの中小企業・小規模事業者にとって、非常に厳しい結果であると受け止めている。

中小企業・小規模事業者は、補助金・助成金の受給や借入れを行って、事業継続と雇用維持に必死に努めてきた。これから借入れの多くが返済時期を迎えているときに、最低賃金の大幅な引上げにより人件費の負担が大きくなると、事業縮小や廃業を選択せざるをえない事業者が増え、雇用、なかんずく最低賃金が適用される人々の雇用(その大部分は非正規労働者)にも深刻な影響が出ることを強く危惧する。
今後行われる地方の審議会では、地域の中小企業・小規模事業者の経営実態を十分に考慮した、明確なデータや根拠に基づく検討が行われることを切望する。

政府には、価格転嫁対策をより一層強力に進めていただくとともに、中小企業が収益を向上できる経済環境を整え、中小企業の生産性向上を後押しする更なる支援など万全な措置を求める。

以上