地域別最低賃金改定の目安に対するコメント

令和5年7月31日

地域別最低賃金改定の目安に対するコメント

福岡商工会議所
会頭 谷川 浩道

 7月28日、地域別最低賃金額改定の目安が示され、全国加重平均では41円、4.3%と過去最大幅の引上げとなった。

 収益を上げ、賃上げが可能な環境にある企業は積極的に行うべきであるというのが、商工会議所の基本的スタンスである。しかし、今般示された目安額は、昨今の物価高騰、今年度の春闘における賃上げの結果を踏まえたものと思われるが、中小企業の経営実態に鑑みて大変厳しい結果であると言わざるを得ない。

 当所の調査では、原材料・エネルギー価格の高騰に伴うコスト上昇分をすべて価格に転嫁できている事業所は、1割にも満たない。加えて、賃上げについては、2023年度に実施または実施予定の事業所のうち65%が収益改善を伴わない「防衛的賃上げ」であり、今回の結果は、多くの中小企業にとって経営を圧迫する要因になりかねない。
 また、最低賃金の大幅な引上げにより人件費の負担が大きくなると、事業縮小や廃業を選択せざるをえない事業者が増え、雇用、とりわけ最低賃金が適用される人々の雇用(その大部分が非正規労働者)にも深刻な影響が出ることが危惧される。
 さらに、最低賃金の大幅な上昇が、いわゆる「年収の壁」を意識した就業調整につながり、中小企業の人手不足に拍車をかけることも強く懸念されるところである。

 今後行われる地方の審議会においては、地域の中小企業・小規模事業者の経営実態を十分に考慮した、明確なデータや根拠に基づく納得感のある議論が行われることを切望する

 政府には、中小企業が収益を上げ賃上げの原資を確保できるよう、労務費分を含む適正価格での取引実現に向けた取組みを一層強力に推進するとともに、中小企業の生産性向上と支払い能力を後押しするさらなる支援を求めたい。
 当所としては、今年5月16日に産官労23団体で開催した「取引適正化推進フォーラム福岡大会」において発表した共同宣言に基づき、引き続き会員企業等への「パートナーシップ構築宣言」の登録推進や円滑な価格転嫁に向けた環境整備に取り組む所存である。

以上